【暗号資産 Web3.0】
暗号資産のイノベーション促進にむけた
分離課税導入の提言
(4/19財務金融委員会)

  1. 税制検討部会

【暗号資産 Web3.0】自民党の藤末健三議員、暗号資産のイノベーション促進にむけた分離課税導入の提言 改正外為法の影響について質疑応答(4/19財務金融委員会)

2022年4月19日に開催された参議院・財政金融委員会にて、暗号資産についての質疑が行われた。自民党会派の藤末健三議員が、暗号資産の分離課税導入、改正外為法の暗号資産業界への影響、ICO詐欺の救済措置について質問を行った。
藤末健三議員は、これまでにも暗号資産やブロックチェーン産業の発展と振興のために数々の精力的な活動で知られている議員である。本年3月の参議院・財政金融委員会では暗号資産やWeb3.0におけるNFTの税制分離課税の導入や、各官公庁への協力呼びかけについて意見を述べている。(2022年3月16日 国会質疑:CoinPost)
4月15日にはTwitterスペース上で自民党 平将明議員と暗号資産・NFT・Web3.0に関する対談を行い、暗号資産税制の改正について意見を述べた。

改正外為法の位置づけと国際動向について確認

藤末議員は、ロシア経済相制裁のための関税暫定法の一部を改正する法律案、外国為替および外国貿易法の一部を改正する法律案について質疑を行い、その趣旨や国際的な足並みについて確認した。
財務省は、制裁対象者の口座を国内の暗号資産交換業者が管理している場合、この口座から第三者に暗号資産を移転することが現行の外為法では捕捉できていないため、改正外為法上の資本取引規制の対象とすることが想定されていると回答し、それらはFATF勧告を踏まえつつ、3月11日のG7首脳声明を受けて速やかに講じるべき措置について対応するものであり、日本独自の対応ではないと回答した。

暗号資産分離課税導入によるイノベーション促進について提言

藤末議員は、日本の暗号資産に様々な規制整備がされている中、課税に関しては雑所得で累進課税がされている。居住者の国内における暗号資産利用促進を促し、海外よりも国内における取引を増加させ、健全な暗号資産の管理を実現するために、分離課税移行の検討が必要であると主張し、見解を尋ねた。

財務大臣は、暗号資産の取引に係る所得は外国通貨の為替差益と同様に、原則として雑所得に区分され総合課税の対象となっていること。一方で上場株式等の譲渡益等は、税制の中立性、簡素性、適正執行の確保などの観点、その他貯蓄から投資へという政策的要請を受け、一般投資家が投資しやすい簡素で中立的な税制を構築するという観点から20%の分離課税が採用されていると説明した。
そのうえで、暗号資産の取引による所得に20%の分離課税を採用すべきという意見があることは承知しているが、給与や事業で稼いだ方は最大55%の税率が適用される一方で、暗号資産で稼いだ方は20%の税率でよいとすることについて国民の理解を得られるかどうか、株式のように家計が暗号資産を購入することを国として推奨することが妥当なのかどうかなど数々の様々な課題があると考えており、こうした課題を踏まえつつ今後丁寧に検討をしなければならないと回答した。

藤末議員は、検討を進めていただきたい理由として、一つに暗号資産は国内でも500万人の方々が保有している状況にあること。そして同時に海外においては既にアメリカにおいても、金融商品の中に暗号資産を組み込んだ商品ができて分離課税のような扱いを受けている状況であること、一番大きい理由として、シンガポールや香港においては税制優遇措置さえ行われているという状況から日本の暗号資産保有者がシンガポールやドバイに移住していると説明した。

日本は外務省、金融庁が他国より先行して暗号資産の法制度を進めたものの、税制が止まっている状況である。

暗号資産技術は世界を変える力として一般的に国の中央銀行が発行する貨幣と区分けし、暗号資産をはじめとするブロックチェーン技術を用いて、Web3.0というGAFA、Googleやアマゾンのような中央集権方に情報を集め管理するものから分散管理に移っていく新しいイノベーションを日本から生み出す大きなチャンスが到来している。
暗号資産を一般的な外貨と同じ扱いというのではなく、今後の将来的なポテンシャルや、我々の経済・金融的な競争力の観点から、財務省、金融庁、他の役所も併せて議論を進めたい、税制改正は重要なテーマであると主張した。

改正外為法における暗号資産交換業者への負担について意見

藤末議員は、既存の暗号資産交換業者は設立から新しく比較的小規模な事業者が多いことを踏まえ、事業者に対する確認義務について、ブロックチェーン解析ツールの導入など、事業者育成を踏まえ過度な負担を設けないよう配慮を求めた。

財務省からは、今般の法改正で暗号資産交換業者に課される事前確認義務、資本取引規制の履行のために暗号資産交換業者に依頼していることは3点。

  1. 業者自身の顧客に制裁対象者がいないかの確認
  2. 制裁対象者からの暗号資産の移転依頼を取り次がないこと
  3. 暗号資産の移転先が制裁対象者またはその疑いがあるときにその移転を行えないこと

1の顧客に制裁対象者がいないかどうかの確認は、既に犯罪収益移転防止および犯収法により法律上の義務として顧客の本人確認義務が業者に既に義務付けられており、この確認をしていれば2の制裁対象者からの暗号資産の移転を取り次がないことも実態上履行されると認識していると回答した。
3の暗号資産の移転先が制裁対象者である場合にその移転を行わないことは、既に例えば米国当局は制裁対象者のアドレスなどを把握した場合のブラックリストアドレス存在している。これを活用してスクリーニングすることが現実的かつ有効な手法であり。その際にブロックチェーンの解析ツールといったものも有効な手法であろうと回答した。
加えて、足元で国際的には暗号資産の移転を行う送金側と受け取り側の双方の情報を両サイドの暗号資産交換業者が互いに通知をし、共有を行うといった業者間の取り組みソリューションが普及している。こういった最新の実務を踏まえ、法改正の内容をしっかりと業者の方々にも周知徹底したいと考えている。実務のあり方についても諸外国の状況などを見ながら有効な対応について、業者の方々とよく意見交換しながら対応していきたいと回答した。

投資詐欺等に遭遇した場合の救済措置について

藤末議員は、海外の暗号資産ICO詐欺に遭遇した場合、暗号資産の交換タイミングにおいて課税が発生するが、投資資金の回収が不能になった場合でも、税金が非免税債権のため詐欺被害に遭遇した方が破産することができない事例を説明し、所得税法第72条において雑損控除は損害または盗難もしくは横領により生じた損失を対象としているが、詐欺による損失は対象となっていない。この点について現在救済措置があるかどうか質問した。

国税庁から、指摘のとおり雑損控除については、災害または盗難もしくは横領により諸生じた損失を対象としており詐欺はそこには入っていないことを説明した。
一方で暗号資産は雑所得の起因となる資産であり、雑所得の起因となる資産の損失については、所得税法第51条第4項において、その損失の生じた年分の雑所得の金額を限度として必要経費に算入することができ、その損失には、詐欺による損失というのも含まれる。従って、ICO投資詐欺に遭遇された方については、個々の事実関係によるため一概にはいえないが、裁判などでもって詐欺によって暗号資産がだまし取られたといった事実が明らかとなり契約が取り消されたといった場合であれば、例えば税務上も暗号資産の交換によって売買益が発生したという取り扱いはしないということ。あるいは、当該暗号資産の損失を、雑所得の金額の範囲内で必要経費に算入することもできるのではないかと考えていると回答した。

藤末議員は、是非被害に遭った方々の声を聞いていただくこと。裁判認定とは非常にハードルが高いと聞いており制度的な工夫を手当てすることを要望した。

最後に藤末議員は、暗号資産についてG7が規制を検討することは、暗号資産が世界的に流通していることの証左である。そういった中で、我が国はこの国際的な経済・金融の中において暗号資産を育てていくという観点を持つべきであることを主張した。

出典:財政金融委員会(2022年4月19日)
https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=6834#314.6

藤末健三 議員 プロフィール

藤末健三 議員 Twitter
藤末健三 議員 オフィシャルサイト

1964年2月18日熊本県熊本市生まれ。86年、東京工大情報工学科卒業後、通商産業省入省。95年、政府留学生としてマサチューセッツ工科大学経営学大学院卒業。96年、ハーバード大学行政政治学大学院卒業。99年、通商産業省を退官し、東京大学大学院講師に就任。2000年、東京大学助教授に就任。2005年、中国清華大学及び早稲田大学客員教授に就任。2013年、早稲田大学大学院国際関係論博士号取得○参議院総務委員長、総務副大臣兼郵政民営化担当副大臣を歴任○現在財政金融委員会理事、行政監視委員会委員、倫理選挙特委員、地方消費者特委員○著書「技術経営論」他多数○米国でプロボクシングライセンス取得

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