JCBA理事 小田 玄紀に聞く!
今後の暗号資産業界に必要なこととは

  1. インタビュー

現在97社(2021年7月1日現在)が会員として所属するJCBA。
創立から比較すると事業内容も多岐にわたり新しいメンバーも多くなった一方、設立当初からのメンバーの事業も一段と深耕が進み、業界に提供いただける知見は増える一方です。

コロナ禍で会員同士の交流が希薄化し、協会発の企業間コミュニケーションが生まれにくくなった今、それぞれの会員企業やその代表の方たちが、どんな方で、いま何を考えているか、JCBA広報委員会が取材させていただき、発信することで、会員間の交流やコラボレーションに発展することを願った企画を開始し、第1回目は協会長でもあるbitbank株式会社廣末社長にインタビューしました。

第2回となる今回は株式会社ビットポイントジャパン(BITPoint)にお邪魔し、協会理事でもある小田社長にお話を伺いました。
知っているようで知らなかった企業内部の雰囲気や、これからの社長の展望など、会員企業との交流が活発なJCBA事務局と一緒に紹介していきます。

メディアの皆様にも、ご取材やご企画のアレンジのご参考にご活用ください。

「株式会社ビットポイントジャパン」HPはこちら

【fileNo.002】 株式会社ビットポイントジャパン 代表取締役 小田玄紀氏


インタビュアー:JCBA広報部会長 西村依希子氏

目次
1. ビットポイントジャパンを設立された経緯
2. 今後の暗号資産業界に必要なこと
3. ビットポイントジャパンについて
4. JCBAの今後について

ビットポイントジャパンを設立された経緯

JCBA広報部会長 西村依希子

西村

協会設立前、会社設立前の勉強会から参加していただき、4期連続で理事をしていただいている小田社長、今日はよろしくお願いします。
小田社長は東証2部上場企業であるリミックスポイントの代表でもあられますが、そこから子会社としてビットポイントジャパンを設立された経緯など伺えますか?

株式会社ビットポイントジャパン 代表取締役 小田玄紀

小田社長

リミックスポイントは、従来から、法改正や規制緩和が起こるタイミングでその業界にいちはやくビジネスチャンスを見出し、事業や投資を行う会社です。
暗号資産に関しても、2016年3月に閣議決定され、資金決済法の範疇で取り扱われることとなったタイミングで、閣議決定の翌日に意思決定し、1週間から2週間で準備して設立しました。そこから自前のシステムをつくり、9月開業というスピードでした。

JCBA広報部会長 西村依希子

西村

確かに、いきなり設立されて他をぬきさって、サービスインされたのは目を見張るスピードでしたね。

株式会社ビットポイントジャパン 代表取締役 小田玄紀

小田社長

そのころ、周りにこういう事業を始めようと思うという話をすると、100人中99人に「やめたほうがいい」と言われたのですが、逆にそう言われたことですごく可能性があるのではないかと感じました。
と言うのも、当時、「やめたほうがいい」という方々全員が、暗号資産に対して「怪しい」「あぶない」というイメージを持っていたので、逆に安心・安全なサービスを提供することができればうまくいくと思ったからです。
その意味で、金融の業務を熟知している金融機関出身者を集めるのが重要と思いました。

JCBA広報部会長 西村依希子

西村

事業内容はすぐ決まったんですか?

株式会社ビットポイントジャパン 代表取締役 小田玄紀

小田社長

最初から現物とレバレッジの両方を取扱う交換業をやろうというのは決まっていましたね。
その中で、カバー先などを加味して、取り扱い通貨は、BTC・ETH・LTC・XRPとしました。

JCBA広報部会長 西村依希子

西村

最初から順調でしたか?

最初はすべてが試行錯誤でしたね。
ただ、コストもそんなにかからなかったので、静かにスタートといった感じでした。

2016年時点ではビットコインは5万円くらいだったし、社内でも特に話題にもならなかったんですよ。
でも、これが2017年になると、ビットコインの価格もあがってきて、気が付いたら社員全員、関係ない部署の社員までもが虜になっていました。(笑)

そのような中、2018年1月に他社で暗号資産不正流出事件が起きました。
最初は何が起きたのか理解できず、みんな、放送された会見をみて事態を把握したのではないかと思います。

一方ビットポイントジャパンは2018年3月期に37億円の利益を計上しましたが、残念ながらその影響もあって一気にマーケットが冷え込み、業界に対する当局の対応も厳しくなりました。

これにより管理体制構築のコストが7倍になった上、出来高が一気に減ってしまい、当社のみならず各社大変苦しみましたね。
この流出事件前は日本全体で1日2,000億円ほどあったビットコインの現物取引が、100億円くらいになってしまいました。

 

JCBA広報部会長 西村依希子

西村

長い冬の時代の到来でしたね。
撤退する会社も多くて、みなさんの悔しい想いで泣かされることも沢山ありました。

そうですね。ただ、急拡大した業界ですから、何かしらの洗礼はあってもおかしくないと思っていたし、同時にそれでも絶対にマーケットは回復すると思っていました。
ビットポイントジャパンは海外でも事業展開していたので、海外の機関投資家に話を聞く機会もありましたが、海外における暗号資産への期待はまったく衰えていないと感じました。

アメリカの人たちと話すと既にとルールメイクの話もでていて、2018年中にはルールも明確になり、これからも伸びる業界だと思いました。
そうなれば、多少遅れても日本にもその波は来るはずだ、と。

2018年6月以降、ビットポイントジャパンは業務改善命令への対応に追われていました。
これももちろん大変でしたが、一方で社内の態勢強化につながったといういい面もありました。
業界全体においても、それまでのネットベンチャーとしての企業意識から金融機関としての矜持をもつようになったのもよかったと思います。

また、自主規制団体が設立され、HOTウォレットとCOLDウォレットの比率を決めるようになったのも大きいです。

ビットポイントジャパンにおいても2019年に業務改善命令が明けた直後に、不正流出が発生しましたが、ウォレットでの保管比率に関する自主規制ルールのおかげもあり、不正流出自体が会社の致命傷とならずにすみました。

JCBA広報部会長 西村依希子

西村

改善命令が解けた直後で、心が折れないか心配しました。
セキュリティについては、いざというときの態勢をしっかり構築するのが肝要ですよね。

 

そうですね。実は当社でも不正流出が発生する前からシステムの開発体制を刷新したいとも考えていたので、これを機に、セキュリティ強化という観点からも外部に委託していたシステム開発を内製化することにしました。

システム開発の内製化のために新しいメンバーが加わり、UI/UXも劇的に改善しました。
また流出直後の対応としては、これまでの過去の流出事件の例を教訓として、顧客目線でのアナウンスや回復を心がけました。

例えば、流出した顧客の暗号資産を返す際も、利確となって税金が発生してしまわないよう現金で返すのではなく、暗号資産で返すことにしました。
幸い、不正流出翌日には流出した分の暗号資産の調達が完了し、顧客口座に暗号資産でお返しできることをアナウンスすることができました。
翌月から順次サービスを再開し、新規口座開設も含めて12月には従前行っていたすべてのサービスを再開することができました。

 

 

今後の暗号資産業界に必要なこと

JCBA広報部会長 西村依希子

西村

日本の暗号資産マーケットの歴史という感じですね。
小田社長は、当協会の理事でもあられますが、今後の暗号資産業界に必要なことは何だと思われますか?

 

価格が大きく動いたこの1,2年は、人によってとらえ方も違うと思いますが、自分としては、日本で新規の暗号資産の取扱いを増やすことと、税制改正の2点が、今後の業界発展のカギだと思っています。

世界で100兆円のビットコインのマーケットの中で、統計上は日本の取引所にあるのは4,800億円、つまり0.48%しかありません。
しかし、体感ではありますが、コミュニティをみてもマーケット全体の5-10%は日本人が所有しているような気がするんですよね。

つまり0.48%しか統計に現れないのは、国内のビットコインが海外に流れているのが主な要因ではないかと思います。

この状況は日本の税収という観点から見ると、税制改正がないために、逆にもったいないことになっているのではないかと。

 

 

ビットポイントジャパンについて

JCBA広報部会長 西村依希子

西村

先日、協会でもアンケートを実施し、1万件以上の反響をいただき、税制改正要望も提出しました。
この税制は、国内でユースケースをつくるためにもマストといえますよね。

さて、話は変わりますが、ビットポイントジャパンの社風はどんな感じですか?

社員はすごくまじめな人が多いですね。
他のグループ会社は若くて明るい人が多いのですが、ビットポイントジャパンは大人で静かな人が多く、男女比率でみると半分が女性という特徴があります。
また有資格者が多いですね。

社是は、「あしたを、もっと、あたらしく。」です。

JCBA広報部会長 西村依希子

西村

まじめで大人で静かでも、「未来をもっと新しいものにしよう」という会社の理念に共感して入社された社員の方々は、柔軟な発想を持った方が多いのだろうなと思います。
ビットポイントジャパンとしてのこれからの戦略はどんな方向ですか?

株式会社ビットポイントジャパン 代表取締役 小田玄紀

小田社長

個社としては、新規取扱通貨をどんどん増やしたいですね。アプローチも歓迎ですし、開発環境やコミュニティが盛り上がっているか、その通貨の、「今」をみて判断したいです。

あと、ビットポイントジャパンのサービスを使っていただいているお客様のためにも、UI/UXをさらに良くしたいですね。
またNFTについては、現在社内でも参入を検討しています。

 

 

JCBAの今後について

JCBA広報部会長 西村依希子

西村

小田さんはお友達が多くて、そのネットワークも広範なので、入ってくる情報がとても多い社長さんですよね。
そういう情報を活かして、俯瞰しながら、とるべき戦略を進められているのが素敵です。

JCBAの今後についてはどうですか?

JCBAについては、もはや暗号資産交換業者のためのものではないと思っています。

あまり知られていないのかもしれませんが、JCBAに加盟している約100社についても交換業者以外が多いですよね。
むしろ交換業の免許を持っている人と持っていない人がコラボする場だと思っています。
規制や改正についても交換業者だけではなく、こうした多面的な立場からの提言である点がすごく大きいと思います。

分科会についてもこれだけ広範に(現在12種類)あるのが、とても強みだと思います。
様々な会社が机を囲んで議論しているのに、最終的にそれらがまとまって提言書になるところが毎度すごいなと思います。
事務局の方々もものすごく苦労されていると思いますよ。

 

JCBA広報部会長 西村依希子

西村

事務局の仕事は、どんどん広範になっていますよね。このメディアも始めちゃったし(ごめんなさい)。

でも、理事も部会長やメンバーも、すごく善意でたくさんのリソースを使ってくれる方ばかりで、協会活動は成り立っていて、ありがたい限りです。
お手伝いしてくれる方も、もっともっと巻き込んでいきたいですね。

なので、理事としては、もっと多くのいろんなフィールドの方々を巻き込んでいくことを考えたいです。

税制に関するロビイングなどについても、政治家に陳情するという従来型ではなく、大事だと思えば、政治家の方々も、よりよい日本をつくるために、いろいろな勉強をすることが大切で、本来は、そちら側から協力要請がくるような関係性がベストではないでしょうか。アメリカや中国にはそれがあります。

日本も、若い政治家の方は熱心だし、早くそうなるといいな、と。

JCBA広報部会長 西村依希子

西村

友達が多い小田さんのプライベートはどんな感じですか?

 

たしかに、この暗号資産業界の活動全般が、個人的には友達を増やすような感覚でもありますね。
あと、グループ事業でやっている電力の価格と暗号資産の価格は朝起きた時と夜寝る前に絶対見ますね。

DeFiやNFTについても情報がめまぐるしくあふれていますが、個人的にも会社的にも自分で何をやるか決めるということはなくて、社員や周りの人がやりたいといってきたことを通すのが会社のカルチャーであり、そのサポートをすることも自分の得意分野です。

電力事業や、感染症対策事業など、グループとしてやっていることも、一見バラバラに見えますが、全部、社員が率先してやりたいと提案してくれた事業です。

もし逆に自分が率先してやろうとすると、自分が限界値になってしまうので、自分より詳しい人に任せるのが大事だと思っています。
極論、やりたい人が必死にやってみてうまくいかないときはそれでいいという性格です。

JCBA広報部会長 西村依希子

西村

人のやりたいことを応援するようになったのは、なにか背景があるんですか?

20年前に東大在学時に、自分の会社をつくって売却して、ベンチャー投資を始めたときからですかね。

2001年当時、東大生で起業する人は、チームラボの猪子さんとか数えるほどで、ほとんどいませんでした。私はあまり大学には行っていませんでしたが、その分社会で多くのネットワークができ、自分が応援したいものを応援できればいいと思いました。

当時はVCのような人たちが出資をするといっても、3期分の決算書をもってこないとダメというのが当たり前になっていて、でも本当に資金需要があるのは起業直後なので、これはおかしいなという思いが強かったです。
そういうのを根底から覆し、起業前の起業家に対する投資をはじめたり、「社会起業家」という概念を日本で普及させて社会起業家の支援も2002年から支援を続けてきました。

こういった新しい価値観やスタンダードをつくるのが好きですね。

最初はそんな訳のわからない段階で出資をするのは、ただの投機だとか散々言われましたが、今となっては、VCだってほとんどが、やる人間を見て判断するように思います。
そういう意味でいうと、今のビットコインも、うまくいくわけがないと言う人がいたり、全体的に見てもまだ数パーセントの人しか保有していない現状が逆に可能性があって面白いと思ってしまいます。

 

JCBA広報部会長 西村依希子

西村

何かを変えるときや、ゼロイチを立ち上げるようなときは、周りにはたいてい、うまくいかないといわれるけど、それが逆にチャンスということですよね。これを聞いて元気がでる、大企業の新規事業担当者多そう。
ぜひ、協会にきてください。仲間がたくさんいますよ!笑

今日はありがとうございました。

小田氏は、暗号資産・ブロックチェーンの社会的有用性についての発信をされており、2021年4月開催のJCBA × JBA共催イベント「SDGs × ブロックチェーン・暗号資産が切り拓く21世紀!」では、世界経済フォーラムの事例から、暗号資産・ブロックチェーンによるSDGsの取り組みについてご講演いただきました。

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小田 玄紀 (JCBA理事 株式会社ビットポイントジャパン 代表取締役)
東京大学法学部卒業。大学在籍時に起業し、のちに事業を売却した資金を元にマッキンゼー出身者らと共に投資活動を始め、「頑張る人が報われる」をコンセプトに、起業家や社会起業家の事業立ち上げや経営支援を行う。
2011年の東日本大震災を契機に、「日本でも再チャレンジを当たり前にしたい」という思いから事業再生を開始。その一環で社外取締役としてリミックスポイントの経営に参画し、2016年に同社代表取締役に就任する。また、同年3月には上場企業子会社としては日本初の暗号資産取引所であるビットポイントを立ち上げ、同社代表取締役に就任。現在は健全な暗号資産市場の発展のために日々国内外のメディアに対して発信・啓蒙活動も行っている。
2018年に紺綬褒章を受章。2019年には世界経済フォーラムよりYoung Global Leadersに選ばれる。

西村 依希子 (JCBA広報部会長)
東京大学法学部卒。日本暗号資産ビジネス協会広報部会長。
株式会社マネーパートナーズ入社後為替ディーリング業務に従事。2015年当時FinTech推進グループリーダーとして東証一部上場グループの金融機関で初めてBitcoinを扱うことを世間に宣言。2016年業界団体として一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)を立ち上げ国内取引所間の連携を開始、その後、国内外の多くの取引所、ブロックチェーンプロジェクトと親交をもつ。FinTech推進室グループリーダー、広報・新規事業推進室長を経て、現在、社長室長を歴任。一般社団法人 日本暗号資産ビジネス協会では事務局を約2年間単独で務めた後、現在、JCBA広報部会長。他、MVL(シンガポール)・Medibloc(ソウル)・Waves(モスクワ)アドバイザー。

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日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)では、暗号資産業界発展のために、様々な取り組みを行っています。各種お問い合せにつきましてはお気軽にご連絡ください。

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